『漢書』地理志の超わかりやすい解説
『漢書』地理志には紀元前1世紀(弥生時代中期)の日本の様子がほんの少しだけ書かれています。一行ほどのわずかな記述ではありますが、日本について書かかれた、歴史上初の文献史料です。また『漢書』地理志の主な内容は中国の前漢の歴史です。
このように『漢書』地理志は前漢について書かれた歴史書ですが、これを編纂したのは後漢の班固なので注意して下さいね。
『漢書』地理志の本文と現代語訳
さて、まずは『漢書』地理志の本文と訳を確認していきましょう。
この次からは、『漢書』地理志の内容を1つ1つ嚙み砕いてわかりやすく解説していきます。
『漢書』地理志の内容
ポイント①楽浪郡
「夫れ楽浪海中に」の「楽浪」とは楽浪郡のことです。楽浪郡とは前漢の武帝が朝鮮半島(現在のピョンヤン付近)に設置した植民地のことです。そのため楽浪郡は中国の領土というわけです。ちなみに「倭人」とは日本人の呼び名ですね。
ポイント②小国の分立
「分れて百余国と為る。」の部分が『漢書』地理志の最大のポイントです。この記述は紀元前1世紀(弥生時代中期)の日本が100余りの国に分かれて互いに争っていたことを意味します。
なぜ争っていたことが、うかがえるかというと、弥生時代中期の遺跡の調査から、敵と戦うことを想定した防御的性格を持った集落が発見されているからです。
具体的には、敵の侵入を防ぐために周囲に堀をめぐらせた環濠集落(佐賀県・吉野ケ里遺跡が有名!)や敵が襲ってきたときに高台に逃げる機能を持った高地性集落(香川県・紫雲出山遺跡が有名!)が見つかっています。
こうした敵と戦うための集落跡から紀元前1世紀(弥生時代中期)の日本は100余りの国に分かれて激しい争いをしていた様子をうかがい知ることができます。
ポイント③朝貢
「歳時を以て来り献見すと云ふ。」とは「定期的にお土産を持って挨拶にくる」という意味ですね。100余りの国の中には、中国の領土である楽浪郡に定期的に貢ぎ物を持って挨拶に行っている国もあったわけです。こうした行為を朝貢といいます。
一問一答-11題-
ここまでの解説で登場した全ての語句に対応した一問一答形式の練習問題を用意しました。定期試験・大学受験・歴史能力検定などの対策として是非活用してみて下さい。
※また記事の最後には「付録:デカ文字で覚える要注意漢字」も掲載しています!
※「+解答解説」ボタンを押すと「答え」を確認することができます。
1.夫れ(①)海中に倭人有り。分れて(②)余国と為る。歳時を以て来り献見すと云ふ。
問1.①、②に入る語句は何か?
問2.この史料の出典は何か?[新潟大・改題]
問3.この史料は、( )世紀の日本の様子を述べたものと考えられている。[関西大]
2.集落の周りに溝をめぐらす( )は、地域集団間の争いに備えた防衛機能をもつ集落であった。[同志社大]
3.環濠集落の代表例として、佐賀県の( )遺跡がある。[同志社大・改題]
4.環濠集落や( )集落が示すように、弥生時代には集落自体が防御機能・軍事機能をもっていた。[京都大]
5.高地性集落としては香川県の( )遺跡がある。[慶応大]
6.紀元前1世紀頃に「倭人」の国が定期的に使者を送っていた、朝鮮半島におかれた中国の王朝の郡はどこか。[明治学院大]
7.楽浪郡は、( )の武帝が、紀元前108年に設置した。[青山学院大・改題]
8.『漢書』地理志は、1世紀に後漢の( )によって編纂された。[中央大・改題]
9.『漢書』地理志に記述のある「歳時を以て来り献見すと云ふ」とは楽浪郡に定期的に貢ぎ物を持って使者を送っていたという意味だが、このような行為を漢字2文字で何というか。
10.楽浪郡は現在の( )付近にあたる。[学習院大・改題]
11.(①)県の吉野ケ里遺跡のような環濠集落や、(②)県の紫雲出山遺跡のような高地性集落の出現は当時の緊張した状況を物語っている。[立命館大・改題]
お疲れ様でした!一問一答はこれで終わりです。
続いて「付録:デカ文字で覚える要注意漢字」の練習問題を掲載しました。特に注意が必要な漢字を含む日本史用語を「ひらがな→漢字」で練習するためのコーナーです。
付録:デカ文字で覚える要注意漢字
要注意漢字を含む日本史用語をまとめました。実際にメモ帳などに書き写しながら練習すると効率的に日本史用語をインプットできます。
問題次のひらがなを漢字になおすと?1.かんじょちりし(紀元前1世紀の日本の様子に言及している前漢の歴史書)
2.はんこ(『漢書』地理志を作った後漢の人物)
3.らくろうぐん(前漢が朝鮮の現・ピョンヤン付近に作った植民地)
4.かんごうしゅうらく(防衛のため周囲に堀をめぐらせた集落)
5.しうでやまいせき(香川県にある高地性集落の代表的な遺跡)
6.ちょうこう(定期的に貢ぎ物を持って挨拶に行くこと)
おわりに
ここまで読んでいただき本当にありがとうございました!繰り返し当記事の解説や一問一答を読み込むことで、日本史の知識が定着しますので、是非、この記事をブックマークして日本史学習の参考にして頂ければ幸いです!
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