皮膚症状は人生を覆う

今日、朝起きて最初にしたことは、ベッドの中でかゆくてたまらない顔をこすったことでした。

ベッドから出ても、皮膚の鱗屑をこすり落とさなければ、とてもかゆみは治まりません。毎日、鏡を見るのが怖いです。見てみればやはりひどい顔です。

水に濡らせば乾燥するので顔を洗うことなどとてもできません。そして、マスクをしなければとても外出できるような顔ではありません。

私は電車に乗ると、よく周りの人の皮膚に目がいくことがあります。いろんな人がいます。男性、女性、スマホを操る人、目をつむっている人。朝からだるそうにしている人。何かに思い悩んでいるようにみえる人。

でも、みなさん、肌がきれいです。赤黒くなく、粉はふいておらず、冬でもすべすべしていそうです。マスクで顔を隠す必要もなければ、皮膚のことで悩むことも少ないでしょう。

他人は皮膚のことで深く思い悩んだりしないのに、なぜ私はこんな異常な皮膚をもっているのでしょうか。ステロイドを使用してからというもの、私の生活は常に皮膚症状に左右されています。皮膚症状が人生を覆っているかのようです。

日本では統計が見当たりませんが、英デイリーメール紙のある記事によれば、イギリスでは、年間自殺のうち推定150ケースが皮膚症状と関連しているとのことです*1

同記事で取り上げられている女性のエピソードには、皮膚症状に悩まされるものの気持ちがよく表れています。

その女性は、ロンドン在住で、20年以上にわたり全身の乾癬を患ってきました。乾癬とは、鱗屑をともなう境界明瞭な盛り上がった紅斑が全身に出る病気です。女性は保湿剤とステロイド外用薬による治療を行っていました。しかし、症状が軽減されたあと常に再発したといいます。

みんなは私のことをピザ顔と呼んだり、凝視して指さしました。まるで見世物のようでした。
乾癬は私の生活すべてに影響を及ぼしました。毎朝起きて最初に考えることは乾癬のことでした。
時折、夜中掻いたところはパジャマが血に染まっていました。
肌は紙みたいに乾燥して、触ると剥がれ落ちました。

そして、深い抑うつ状態に陥り、自殺願望をもつようになったといいます。

私は他の乾癬患者が自殺したいと言っているのを聞いたことがあります。
実際に、私が会ったある女性は、乳がんを患ったことがあるけれども乾癬の方がもっとひどいと言っていました。

乾癬とアトピーは一括りにはできませんが、同じ皮膚病患者として、共感するところが多いように思います。

記事は、ステロイドは医師の管理のもとで処方されるかぎり安全であると指摘したうえで、件の女性も、ステロイド外用薬、保湿剤、メトトレキサートおよびヒュミラを使用することで一時的に寛解したと結んでいます。

ところで、イギリスのステロイド外用薬をめぐる状況は、日本とよく似ているところがあるようです。患者はステロイドに恐怖を訴え、皮膚科医はステロイドは適切に使用すれば安全だと主張する。この状況は、世界のなかでも、免疫抑制剤の処方がよく行われている国で起きているように思います。

ステロイドからタクロリムス、シクロスポリン、それからオマリズマブやデュピルマブへ。皮膚症状を免疫抑制剤で抑えつづけることは、人生を免疫抑制剤で覆うことに他なりません。それを良しとするか否か、今はその分岐点に立たされているように思えてなりません。

*1:Psoriasis sufferers who are too scared to use the steroid cream that can beat it. The Daily Mail, PUBLISHED: 23:55 GMT, 18 June 2012

4件のコメント

  1.  とても興味深く読まさせてもらっています。私は顔に症状があり、良くなったと思っても原因不明で急に下降していきます。ここ10年以上いつもいつも悩まされ本当にアトピーに人生支配されています。人と話していてもその人の肌の状態が1番気になり、自分でもおかしいと思います。体に悪い物をたらふく食べ、夜更かしをし、タバコを吸い、なんでこんな人達の肌は美肌なんだといつも恨んでいます。こんな自分が大嫌い。私は出産で死にかけたのですが、あの時に死んでいたらと思うことがあります。自殺する勇気はありませんので。食事制限もしてますので楽しみがほんとにない。よく食事制限をしてすごく改善されたという記事を読みますがその点はどう思われますか?本当のところを知りたいです。

    1. 他人の肌の状態が気になるのは私も同じです。傷ひとつなく、艶やかで、真っ白な肌を見ると、男女関係なく、その美しい肌に見とれてしまいます。そして、自分の汚い肌が嫌でたまらなくなります。
      それでも、こんなボロボロの皮膚でも、なんだかんだと生きています。
      皮膚症状のせいで、つらいことが9割、よいことが1割くらいのものですが、それでも今はまだ死ぬのはもったいないと、心のどこかで考えているのだと思います。
      さて、「食事制限をしてすごく改善されたという記事」についてですが、その著者は、何の利害関係も持たない立場で書いているのでしょうか。
      健康食品、サプリメント、グルテンフリーなど、何らかの商品の販売と結びついてはいませんか。
      つまり、本当か嘘かわからない成功体験をエサにして、食事制限のために必要な商品を売る行為と結びついている記事であれば、信頼性に劣る記事であると私は思います。
      一般論としては、「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016年版」の p.133「(1)食物」の項が参考になると思います。
      要するに、ある食物に対するIgEが高いだけでは、その食物がアレルゲンである根拠にはならないこと。
      多因子疾患なので、食物アレルゲンの除去のみで良くなるかどうかはわからないこと、などが指摘されています。
      また、深谷元継先生のサイト「アトピー性皮膚炎のステロイド外用剤離脱」の中の記事「私の考えるアトピー性皮膚炎ガイドライン」を参照ください。
      小児期・思春期の項に、食事性の悪化要因について記述があります。こちらも参考になると思います。
      最後に、個人的な考えです。
      いわゆるアトピーの原因がわかっていないので、食事制限が有効かどうか、現時点では、本当のところは誰もわからないのではないでしょうか。
      もちろん、偶然に、食事制限で良くなった人もいるのかもしれません。
      しかし、標準治療も、脱ステ医の佐藤健二先生も、現時点では、食事制限をすすめていません。それは、信頼に足るデータが不足しているからだと思います。
      よく砂糖がよくないといわれますが、私は食べて悪化したと思われる経験がないので、甘いものを制限したことはありません。
      一方で、香辛料を食べると、汗をかいたり、口の周りがムズムズしたりして、かゆくなるので、唐辛子、わさび、からしなどは制限しています。
      昔はタイカレーが好きだったのですが、かれこれ10年くらい食べていません。寿司もサビ抜き、ホットドッグのマスタードに注意したりします。
      でも、この程度のことで、いわゆるアトピーが極端に良くなったり、悪くなったりということはないと思います。
      また、制限して栄養不足になるよりは、多品目を腹八分目くらいに摂取して、豊富な栄養を摂った方が良いように思います。

      1. 読んでいただいてありがとうございます。
        そして詳しいご説明まで。
         私は24歳の時に肌に赤みが出た為、皮膚科に行き、その時に出された保湿クリームのようなもの(ステロイド入り)を副作用の説明もなく、とにかく塗ば肌がきれいになるため化粧下地として塗り続け、1年後に爆発を起こし、その後1年かけてステロイドも抜けたと思ったのですが、原因不明の悪化を数年に1回起こしています。今まで悪化因子がわからずだったのですが、「皮膚の記憶」を、読ませていただきとても腑に落ちました。今回の肌荒れを起こすまでは、保湿をしていたので何かしら成分が似ていた物に反応を起こしていたのかもしれません。しかし、脱保湿をして1年赤みとボロボロと落ちる皮膚状態は治らずもちろんお化粧ができる状態でなく、もう食事ぐらししかと思っていました。ご説明にあったガイドライン2016年版、佐藤健二先生の本、読みました。私は食事後、ほぼ口周り、顎周りが痒くなり赤くなるので、食べ物だと思っていたのですが、体温が上がる為と記述があり、納得したところもあります。というのは、遅延型フードアレルギー検査も受けて、卵、乳が出ていたので除去もしたのですがよい結果がでません。
        あの時ステロイドを塗ったせいで時間もお金も生活全般こんなに支配されないといけないとは泣けてきます。この狂った皮膚の記憶は、どうすれぱリセットされるのでしょうかね。
        とても長くなってしまいすみません。
        私もどこか、いつか、救いがあるのではと思ってもう少しだけがんばってみようと思います。でも寿命が少し縮んでもいいから普通の肌に戻りたいです。

        1. 細胞の記憶については、まだまだ研究に時間がかかりそうです。
          ステロイドを除いた場合の、皮膚症状を改善させる今一番現実的な方法は、生物学的製剤など分子標的薬の使用ではないでしょうか。
          今は高価なデュピクセントのみですが、5年後くらいには、種類も増え、価格も下がってくるかもしれません。
          ただし、安全性を度外視すればの話です。

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