白内障と脱ステロイド

前回の記事「白内障とステロイド」の続きです。

前回の要点を整理します。

  1. アトピー性皮膚炎には白内障が合併しやすい
  2. ステロイド外用薬は白内障に大きな影響を与えない
  3. 顔を叩いたりすると白内障のリスクが高まる

とりわけ、重症アトピー性皮膚炎で顔面に紅斑がある場合には、治療に難渋して皮膚炎が慢性に経過するので、白内障のリスクが高まるかもしれないということでした。

さて、脱ステロイド中に白内障を合併した場合に、ステロイドで炎症を抑えないから白内障になってしまうのだ、という主張があります。

この考え方は、日本皮膚科学会ガイドラインの次の一文に凝縮されています。わざわざ「ステロイド忌避による」と付け加えられているのです。

ステロイド忌避による顔面皮疹の悪化や叩打癖が危険因子と考えられる

「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016年版」より

眼科医の考え方も同様のようです。その中身は皮膚科医のおうむ返しですが。

よく効く薬には副作用もあり、巷ではその面ばかり強調されすぎて、ステロイドの不適切な治療が行われることもあります。ステロイド治療を急に中止したための副作用が、眼合併症を誘発することもあります

8.眼合併症の対策 | 公益社団法人日本眼科医会

これらの主張は、確かに否定できません。ステロイド忌避により顔面の皮疹が悪化し、そのために顔を叩いたりこすったりする回数が増えることがあれば、間接的には白内障のリスクも高まるでしょう。

しかし、ステロイド忌避によって悪化する人ばかりではありません。ステロイドを使用しないことで炎症が徐々に治まっていく人も多いのです。その場合、短期的には白内障のリスクは急激に上がるかもしれませんが、長期的にはほとんど問題にならないくらい下がるはずです。

また、仮に皮膚炎がステロイド誘発性のものであれば、治療の継続はむしろ炎症の遷延化につながり、白内障のリスクは高まるかもしれません。

さらにいえば、ステロイドによって顔面の酒さまで生じた場合は、ステロイドを中止せざるを得ないでしょう。タクロリムス外用薬の塗布に切り替えることも有効かもしれませんが、タクロリムス外用薬でも酒さ様皮膚炎は生じ得ます。つまり、外用治療を中止せざるを得ない場合もあるはずです。

とりあえず、この堂々巡りの議論は措くとして、今回私が問題提起したいのは次の点です。それは、ある患者が脱ステロイドを行って白内障になった場合に、その患者が脱ステロイドを批判しがちであるということです。

「脱ステロイドをして白内障になった。脱ステロイドなんかしなければ良かった」など、脱ステロイドを悪とみなすかのような患者の声を聞きます。

これはお門違いもいいところです。これまで述べてきたように、脱ステロイドは白内障の直接の原因ではありません。脱ステロイドは、顔を叩いたりこすったりする回数を増加させるかもしれないという間接的な要因にすぎません。

本来、ステロイド治療を続けるか中止するかは、患者が決めることです。したがって、患者は、その治療の結果を、自分で選択したものとして素直に受け入れるべきです。

すなわち、脱ステロイド中に白内障になった場合に、医師の治療方針やその他諸々の事象に全責任を転嫁すべきではなく、脱ステロイドにより顔を叩く回数が増えるリスクは脱ステロイド実施前後において十分に認識されるわけであるから、眼科検査など予防的措置を取るほか脱ステロイドの中止を含め顔を叩かないための対策を講じることも可能であったはずであるし、医師により強制的に脱ステロイド療法を施されたという事実がない以上、患者は自らそのリスクと結果を引き受けるべきということです。

畢竟、脱ステ患者が脱ステを批判することは、自らを批判することに他なりません。脱ステロイド療法や脱ステ医に批判の矛先を向けても、何の解決にもなりません。その患者の脱ステロイドのやり方がまずかったかのかもしれず、その非を脱ステロイド一般にまで敷衍すべきではありません。自らが選んだ治療とその結果を、自ら受け止めて且つ検証しなければ、問題の解決からは遠のくばかりではないでしょうか。

私も赤ら顔であり、そのために乾燥して毎日のように顔がかゆくなります。また、アレルギー性結膜炎のためか、眼がかゆくなることがあります。そのため、顔を叩いたりこすったりする気持ちはよくわかります。実際に、叩いたりこすったりしているので、自分が白内障になったとしても、仕方のないことだと覚悟しています。

タクロリムス外用薬を使えば赤ら顔が改善するかもしれませんが、過去に酒さ様皮膚炎を起こしているので、酒さ様皮膚炎を起こすリスクを取らずに、なるべく顔を叩かないようにして白内障のリスクを減らすように心がけています。どのように対処しようと、それは私の自由です。

そもそも、初めからステロイドによる治療を行っていなければ、赤ら顔になったり、脱ステにより極端に悪化して顔を叩いたりするということもなかったでしょう。その意味で、ステロイドはアトピー性白内障の遠因であると私は考えています。

「白内障は脱ステロイドの後遺症」というよりも、「白内障はステロイドの後遺症」と捉えた方がより実態に近いでしょう。

ところで、アトピー患者の白内障等を予防するため、定期的に眼科で検査をすることが推奨されています。

ただし、脱ステロイド中の人は、ステロイド薬を使用しない治療を皮膚科で行っていることをはっきり伝えないと、ステロイド点眼薬やステロイド眼軟膏を処方されるかもしれないので注意が必要です。

(当サイトはいかなる治療法をも推奨するものではありません。また、当サイトに掲載されている情報を利用することにより発生したいかなる損害についても責任を負うものではありません。)

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2件のコメント

  1. はじめまして。私もステロイド離脱患者です(離脱開始して6年になります)。私自身は離脱開始後1年で両眼ともに白内障になり、眼内レンズにしました。離脱開始時にも深谷先生のブログを読み込み、深谷先生、佐藤健二先生や美津子先生の著書も買って白内障の可能性についても認識して、リバウンド入院(阪南ではありません)のさいにも眼科で検査してもらっていたのですが、退院し離脱開始1年ほどでリバウンドが安定した頃に白内障に気づきました。私自身はステロイド離脱を後悔していませんし、こればかりはしかたありません。

    この白内障の問題についてですが、ステロイド使用と白内障の相関関係は、あまり関係がないというのは、私個人の体感としても納得しています。ステロイド使用中の患者でも白内障になるひともいて、離脱患者にとくに多いわけではない、とたしか深谷先生の著書『ステロイド依存―ステロイドを止めたいアトピー性皮膚炎患者のために』に記述があるはず。

    私の周囲の親しい離脱患者にも白内障になったひとも知らないのですが、それでも注意しておくほうがいいよ、とは言っています。みなさんを脅かしているのではなく、リスクのひとつとして冷静に知っておくべきこと、というつもりです。そういう意味で、ブログのこのエントリーを興味深く拝読しました。どうもありがとうございます。長文の書き込み、失礼いたしました。

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