デュピクセント所感(2)

デュピクセント(デュピルマブ)について現時点での補足です。

過去のデュピクセントの記事のなかで、個人的に興味がある点として次の3点を挙げていました 1)期待の新薬ネモリズマブ

  • 副作用
  • 薬価
  • 外用薬との併用

このうち、薬価は収載されて 81,640円 (300mg2mL1筒) と決まりました。2週間隔で投与するため、1月あたり2筒で 163,280円。3割負担の場合で48,984円です。

また、外用薬は原則として併用することがわかりました。

 

けれども、副作用についてはよくわかりません。

副作用のうち、とりわけ私が気になるのは、次の2点です。

  • 中止時にリバウンドは起きるのか
  • 結膜炎への対処

この2点について、それぞれ参考となる情報がありました。

まず、リバウンドについて。アメリカのNational Eczema Associationのウェブサイトに投稿された次の記事です。

Q & A: Introducing Biologics with Dr. Paul Yamauchi

この記事は、医師のPaul Yamauchi氏がデュピクセントに関する質問に答えたものです。

この答えがどこまで正しいかはわかりませんが、患者の興味を満たすに十分な内容であり、そのなかにはリバウンドについての質問もありました。

質問のみ翻訳引用すると次の通りです。

「デュピクセントはすべてのアトピー性皮膚炎の人に効くのか?」
「デュピクセントが有効でない患者の割合はどれくらいか?」
「患者はデュピクセントをいつまで続けるべきか?」
「生物学的製剤をやめたらリバウンドは起きるのか?」
「デュピクセントは子供にとって安全か?」

答えの詳細については記事を読んでいただきたいのですが、Yamauchi氏は、リバウンドについて、ステロイドやシクロスポリンでは激しいリバウンドがあるけれども、生物学的製剤ではゆっくりしたものになると指摘しています。

 

リバウンドについて補足すると、日本では、リバウンドについて、

「原疾患の悪化」
「アトピー性皮膚炎の再燃」
「炎症のぶり返し」

などと表現する医師が少なからず存在します。

こうした一部の医師たちは、リバウンドはステロイド外用薬の使用とは無関係であると思い込んでおり、アトピー性皮膚炎そのものの悪化であるとみなすのです。

しかし、より一般的には、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬によって誘因される副作用としてのリバウンドは存在すると考えられています。

顔面に生じる「酒さ様皮膚炎」の病態がまさにリバウンドであり、全身的に生じれば、日本では「リバウンド」、海外では「Red Skin Syndrome: RSS」などと呼ばれます。

「Rebound リバウンド」という表現自体、教科書に載っていますし 2)ステロイドによるリバウンド 、ステロイド外用薬の添付文書にも載っています 3)オランダLarebがステロイド離脱症候群の報告を受理

ステロイドによるリバウンドは、激しい潮紅と紅斑を生じ、丘疹、膿疱、びらんなど多彩な皮膚症状を呈するものです 4)Fukaya M et al. Topical steroid addiction in atopic dermatitis. Drug, Healthcare and Patient Safety 2014:6 131–138. 。原疾患の悪化とは区別して認識しなければなりません。

 

デュピクセントを対象とした厚生労働省の審議会では、副作用のうちの「アトピー性皮膚炎」には「原疾患の悪化」が含まれることや、「本剤投与を中止することで、再燃する患者も一部います」と説明されています 5)薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録(2017年11月6日) |厚生労働省

したがって、「原疾患の悪化」という意味においては、デュピクセントでリバウンドは生じ得ます。

けれども、ステロイドやタクロリムスのような、薬物投与によって誘発される中止直後の激しいリバウンドは生じないのかもしれません。

 

ところで、デュピクセントをいつまで続けるべきかについて、Yamauchi氏は、皮疹がなくなってもデュピクセントを打ち続けるべきだと述べています。

糖尿病患者が血糖値が下がったからといってインシュリンを打つのをやめないのと似たような状況だといいます。

これは、日本のデュピクセントの最適使用推進ガイドラインとは対照的です。同ガイドラインには、6カ月を目安として寛解の維持が得られた場合に「一時中止」等を検討する旨の記載があるからです。

アメリカではデュピクセント単独であるから打ち続けて、日本ではステロイド併用であるから一時中止を検討するということなのかもしれません。

厚生労働省の審議会では、次のようなやりとりがありました。

○菊池委員 16週までは、効かなかったらやめなさいとありますけれども、効いた人はその後もずうっといくのですかということです。

○医薬品医療機器総合機構 そこは、様々な使い方が考えられると思います。この後の最適使用推進ガイドラインのほうにも関連しますけれども、有効性が見られた患者さんの中では、それぞれ患者さんの状態によって、医師が有効性等を確認しながら投与継続の適否を判断されるかと考えております。 6)薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録(2017年11月6日) |厚生労働省

デュピクセント投与継続の適否について、医師が判断するということなのですが、中止や再開を繰り返すことになるのではないかと懸念されます。

ステロイドで抑えきれない患者がデュピクセントを使うのであって、その患者がデュピクセントを中止すれば、ステロイドを併用していてもいつかは再燃すると考えられるからです。

悪化と寛解を繰り返すことは、患者の精神面に不安を与えます。また、一時中止となり高額の医療費負担から解放されたと思ったら、再燃してまた大金が必要になるという具合で、家計のやりくりが難しくなりそうです。

 

次に、結膜炎について。

臨床試験において、デュピクセント群は、プラセボ群に比して、結膜炎の発現の割合が高いところが私の印象に残りました。

例えば、52週間の試験では、結膜炎の有害事象がデュピクセント群で425例中76例 (17.9%)、プラセボ群で315例中25例(7.9%)に発現しています。

結膜炎が起きたらどうなるのか、デュピクセントを中止しなければならないのか、などが気になるところです。

このデュピクセントによる結膜炎について、今年、Wollenberg 氏らがまとめた次の論文が出ました。

Wollenberg A et al. Conjunctivitis occurring in atopic dermatitis patients treated with dupilumab-clinical characteristics and treatment. J Allergy Clin Immunol Practmonth 2018.

結論としては、結膜炎や充血が起きたとしても、ステロイド点眼薬やタクロリムス眼軟膏によって治療が可能であるとのことです。

なぜデュピクセントで結膜炎が起きるのか理由はよくわかっておらず、喘息や鼻茸の臨床試験よりもアトピー性皮膚炎患者の試験でよくみられたそうです。

デュピクセントの治療は長期にわたるので、副作用としての結膜炎のリスクは念頭に置いたほうが良いかもしれません。

 

皮膚には基本的にステロイド外用薬を併用し、眼の炎症にはステロイドやタクロリムスを追加するとすれば、結局はステロイドがついて回ることになります。

ゆえに、日本におけるデュピクセントの登場は、新薬によるパラダイムシフトとは到底いえず、ステロイドに上乗せする高価なオプションが増えただけという感じがします。

 

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