デュピクセントが明らかにするもの

2018年1月、デュピクセント(デュピルマブ)の添付文書とインタビューフォームが公開されました。

インタビューフォームの「開発の経緯」には、次のように記されています。

デュピクセントは、アトピー性皮膚炎に対して薬効を示すことが期待され、ステロイド外用剤やタクロリムス外用剤等の抗炎症外用薬で効果不十分なアトピー性皮膚炎患者に対する治療薬として開発が進められてきた。

つまり、ステロイドやタクロリムスでは効果が不十分な患者が存在することがわかります。

また、今月出版されたアトピー性皮膚炎の専門書「Evolution of Atopic Dermatitis in the 21st Century」のなかには、次のような一節があります。

It is possible to control skin symptoms in the majority of cases through the three pillars of treatment advocated from Japanese Dermatological Association (appropriate pharmacotherapy, removal of aggravating factors and skin care). However, it is certain that there are at least some patients for whom control of symptoms is difficult with the current target therapies.

日本皮膚科学会により提案されている三本柱の治療(適切な薬物療法、悪化因子の除去、スキンケア)により多くのケースで皮膚症状をコントロールすることは可能である。しかし、現在の標的療法を用いても症状をコントロールすることが難しい、少なくとも一定の患者がいることも確かである。1)Igawa K., Yokozeki H. (2018) New and Future Therapies. In: Katayama I., Murota H., Satoh T. (eds) Evolution of Atopic Dermatitis in the 21st Century. Springer, Singapore.

つまり、ステロイドやタクロリムスを用いる標準治療によっても、症状をコントロールすることが難しい患者がいることが指摘されています。

上記のような指摘がなされるようになった背景のひとつに、抗体医薬や核酸医薬などのアトピー性皮膚炎に対する新薬の開発があると思われます。

デュピクセントなどの新薬の登場によって、ステロイドやタクロリムスなどの従来の薬が、決して万能ではないことが明らかにされようとしているのです。

従来は、ステロイドとタクロリムスと保湿剤さえあれば、すなわち標準治療によれば、アトピー性皮膚炎はコントロールできるといわれてきました。

しかし、新薬を臨床導入するための理由づけとして、従来の治療法には少なからず問題があったと言わねばならない必要が生じているようです。

それに応じて、これまで無視されがちであった、標準治療に対して抵抗性をもつサブグループの存在への認識が深まりつつあるようです。

一方、新薬の効果が不十分な患者が出る可能性も忘れてはならないでしょう。

最近、ステロイドやプロトピックなどの薬物を使わない方法、いわゆる脱ステロイド療法の方が、ステロイド治療よりも効果的であったというエビデンスも出てきています 2)https://doi.org/10.2147/CCID.S109946

アトピー性皮膚炎に対する治療の標準化は、まだまだ時期尚早であり、さまざまな治療手段の可能性を探る段階にあると感じます。

References   [ + ]

1. Igawa K., Yokozeki H. (2018) New and Future Therapies. In: Katayama I., Murota H., Satoh T. (eds) Evolution of Atopic Dermatitis in the 21st Century. Springer, Singapore.
2. https://doi.org/10.2147/CCID.S109946

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