ステロイド外用薬Q&A

博士、今日はステロイド外用薬について教えてください。

君はアトピー性皮膚炎と診断されたのかね?

はい。

じゃあステロイドを塗ったらいいじゃないか。

ええ。でも、ステロイドを絶対に塗りたくないという人もいるようですね。なぜですか?

そういう人もいるが、大抵の人はステロイドを塗っているよ。

なぜ、塗る人と、塗らない人がいるんですか?

アトピー性皮膚炎には診療ガイドラインがあるから、まずはそれを読んだらいい。それが標準治療なんだから。

博士。はぐらかさないでくださいよ。

まあまあ。ところで君はアトピー性皮膚炎を治したいのかね?

もちろんですよ。

残念ながら、現時点では、アトピー性皮膚炎を治すための治療法はないんだよ。

そうなんですか?

自然治癒するともいわれるが、これをこうすれば治るといったような、積極的に治すための治療法はないのさ。

はあ。でも、アトピー性皮膚炎が治ったという人もいるじゃないですか。アトピーは治せますという医者もいますよ。

だから、ガイドラインをまず読めといったんだ。ガイドラインには、アトピーを完治させる治療法はないと書いてある。

そうなんですか。では、治ったという人や治せるという人は何なのですか?

なかには自然治癒した人もいるかもしれない。それ以外は、まあ、あまり相手にしないことだな。それを話し始めたら長くなる。

では、アトピー性皮膚炎の治療をしている人は、みんな治らないのにステロイドを塗っているんですか?

そうだよ。

ひどいじゃないですか。そんなこと聞いてませんよ!

ステロイドを塗っても治りはしないが、塗ると症状が軽減されるのさ。対症療法というやつだ。

なんだか釈然としませんね。

ステロイドを塗ってアトピーを忘れられれば、治ったようなもの、というのが医者の理屈なのさ。

はあ。それはそうかもしれませんが・・・。ともかく、楽になるためには、ステロイドを塗った方がいいわけですね?

そうだよ。

。。。

。。。

ほんとうですか?

建前では。

えっ。本音のところを教えてくださいよ!

それを話し出したら長くなってしまうよ。

いいですよ。長くても聞きますよ。

そうかね。はじめに言っておくが、アトピーは私の専門外だよ。それから、君の健康については責任を負わないよ。

はい。自己責任というやつですね。それはわかっています。

自己決定権と言ってほしいね。それから、君はアトピーに食べ物が関係しているとか、ストレスが関係しているとか、考えているかね?

診断されたばかりで、とくに考えたことはありませんけど。

そうか。砂糖がどうの、油がどうの、心のあり方とか、そういう厄介なことを言い出す患者ではないだろうね?

はあ。

話が長くなるからね。えー、何を聞きたいのだったかな?

なぜステロイドを塗りたくないという人たちがいるんですか?

副作用があるからだよ。

ステロイド外用薬の副作用ならネットで少し調べました。

なんと書いてあったかね?

塗り薬は飲み薬とくらべて危険ではないとか、色素沈着は起きないとか、色々です。適切に使えば安全なんですよね?

君は子供かね。

えっ?

そんな子供だましにだまされるほど、君は子供なのかね。

ですから、教えてくださいよ。

外用薬でもわずかに全身的に吸収されるのだから、塗った皮膚だけの問題ではない。それから、ステロイドにより全く色素沈着が起きないことは証明されていない。患者個人により条件が異なるのだから、適切とされる治療に抵抗性の患者が出てくる。適切に使えば安全だなんて簡単な話ではないよ。

適切に使いこなすのが難しいということですか?

まあ、そういうことになるかな。さて、まず基本から押さえようか。なぜステロイドを塗るのか知ってるかい?

えーと、炎症を抑える作用があるんですよね。

ステロイドがその受容体に結合すると、細胞内のDNAに作用して、様々なタンパク質の合成を促進したり抑制したりする。

・・・。

炎症性サイトカインなどの産生を抑制したり、T細胞などのリンパ球のアポトーシスを誘導したり・・・。

難しいことはよくわかりませんが、抗炎症作用と免疫抑制作用があるんですよね。それくらいは調べました。

そう言われている。でもステロイドが炎症を抑えるメカニズムが完全に解明されているわけではないよ。作用機序の詳細はわからないが、ステロイドを塗ったら改善した人が多かったから使っているわけだ。

でも、半世紀以上使われていて、安全性も科学的に立証されているわけですよね?

それも子供だましだ。安全性が立証されているといっても、実際に副作用はある。副作用のない薬はないという人もいるが、副作用はあるなしの問題ではなく、頻度と程度の問題だよ。

どういうことですか?

風邪薬を飲むと眠くなることがあるだろう。また抗生物質を飲むと下痢をする人が少なくない。これらは頻度の高い副作用だが、程度としては致命的ではない。一方で、風邪薬でも抗生物質でも、頻度としては非常に稀だが、死に至ることもある。

そうなんですか。

ステロイド外用薬でも、どのくらいの頻度でどの程度の副作用が生じるかを考えた方がいいだろう。

わかりました。では、ステロイド外用薬の頻度の高い副作用には、どのようなものがあるのですか?

まず、皮膚が薄くなることがある。

薄くなる?

皮膚萎縮ともいう。皮膚が薄くなると聞いてもピンとこないだろうし、あまり気に留めない人もいるだろう。

確かに、あまり想像できませんね。

血管が透けて見えたり、弾力性がなくなってシワのようになることもある。

それはちょっと嫌ですね。

皮膚のセラミドやコラーゲン線維が減り、保水力が弱くなるといえば、印象が変わるかな。

それは治るんですか?

そこが問題だ。ステロイドを塗るのをやめれば元に戻るという人もいる。しかし私は、長期に塗っていた人で塗るのをやめても治らない人を知っているよ。それに皮膚線条は一度できると治らないとされている。

はあ、だから塗りたくない人がいるのですか?

まあ、慌てなさるな。次に毛細血管拡張があるね。

血管が浮き出て見えるのですね。赤ら顔など、これは想像ができます。

赤ら顔といってもいろいろタイプがあるがね。

これは治るのですか?

わからない。治るという人もいれば、治らないという人もいる。タイプが様々だから一概にはいえないだろう。

はあ。

それから、感染症にかかりやすくなる。

どんな感染症ですか?

もちろん、様々な感染症だよ。ウイルス、細菌、真菌感染症。免疫抑制作用があるわけだからね。ニキビもできやすくなる。

はあ。

まあ、他にもいろいろと副作用があるが、今言った副作用が一般によく指摘されるものだ。

では、頻度が稀であっても、ひどい副作用にはどのようなものがあるのですか?

ここからが本題だ。もちろんステロイド外用薬を大量に長期に使用した場合には、稀に致命的になることもある。それはそれで問題なのだが、それよりも、ステロイドを塗りたくないという人たちの多くが問題視している副作用があるんだ。

どんな副作用ですか?

ステロイド外用剤依存だ。

依存? アルコール依存症のようなものですか?

似たところはある。ステロイドを繰り返し塗っているうちに、ステロイドを塗らずにはいられなくなるわけだ。そして、だんだんと効かなくなり使用量が増えていく人もいる。

やめられなくなるのですか?

依存していれば、塗るのをやめると離脱症状を起こす。だから、やめるにやめられない人が多い。

離脱症状ですか。

離脱症状がどのようなものかを知るには、インターネットで「脱ステロイド」や「Topical Steroid withdrawal」で画像検索してみるとよいだろう。

今スマホで見てみますよ。えーと、Topical Steroid withdrawal ですね。ググってみます。うわー!

どうかね?

ちょっとひどいですね。これは本当にステロイドの副作用なんですか?

さっきも言ったように、ステロイドの作用と副作用はよくわかっていないのだよ。でも、その人たちはみんなステロイド外用薬を塗っていたわけだ。

うーん。

しかし、皮膚科医は、それはステロイドの副作用ではなく、アトピー性皮膚炎自体の悪化だと言っているのさ。

でも、アトピーだけでこんな風になりますかね?

そこだよ。常識で考えればアトピーだけでこんな風にはならないだろう。

でも、みんながこうなるわけではないのですよね?

これは頻度というより、ステロイドを使う人の条件に着目した方がいいだろう。

条件?

個人のステロイドに対する感受性の問題だね。

感受性?

投与する薬物の濃度が同じでも、個人の反応がみな同じであるとは限らない。

個人で薬の効き方に違いがあるということですね。

その可能性があるということだ。ステロイドへのアレルギーをもつステロイドアレルギー群のほか、ステロイド抵抗性群、ステロイド依存性群が存在するようなんだ。もちろんステロイドがよく効くステロイド感受性群もいる。

どうやって見分けるのですか?

ステロイドアレルギー群はパッチテストをすればわかる。でも、その他を見分ける方法は今のところないんだ。

塗ってみなければわからないということですか?

そういうことになるかな。まあ、ステロイド感受性群が多くて、抵抗性群や依存性群の方が少ないことは推測できる。依存性群が多ければ、もっと副作用を訴える人が多いだろうからね。

社会問題になっているでしょうね。

さて、これで、ステロイドは安全だという人もいれば、ステロイドは塗りたくないという人もいる理由がわかっただろう。

えーと。どちらの言い分が正しいのでしょう?

まだわからんのかね。どちらも正しいといえるのだよ。

どういうことですか?

ステロイド感受性群の患者や、その患者を診ている医師は、ステロイドは安全だというに決まっているだろう。

はあ。

逆に、ステロイド依存性群の患者や、それを診たことのある医師は、ステロイドは危険だというに決まっている。

まあ、そうですね。

そして、世の中にはステロイド感受性群の方が多いので、ステロイドは安全だという声の方が大きい。少数の依存性群の声はなかなか届かないわけだ。

確かに、ステロイドを怖がる必要はないという情報が多い印象ですね

感受性群はステロイドを使う標準治療を選び、依存性群は脱ステロイドを選ぶ。アトピー性皮膚炎患者はこの2つのグループに分断されている。

なんだか大ごとになってきましたね。

依存性群は、日本皮膚科学会に対して、ステロイド依存症の存在を認めてガイドラインに記載することを求めているんだ。1万6000の署名が集まったこともある。

それで、依存症は認められたのですか?

署名の提出を受けても、皮膚科学会はステロイド外用剤依存の存在を認めなかった。ステロイド依存患者は今も存在しないものとされている。

えっ、本当ですか。

本当さ。患者が依存を訴えても、皮膚科医からはステロイドを適切に塗らなかった患者とされてしまうんだよ。

そんな。

ともかく、ステロイド外用薬は、それを適切に使うかどうかだけが問題とはいえない。適切に使っているはずの標準治療でも、コントロール不良となる患者群がいることは皮膚科医も認めているんだ。

でも、ステロイドでコントロールできる患者の方が多いのですよね、割合としてはどのくらいなんですか?

それはわからない。しかし、半年のステロイド治療で、改善が4割くらい、症状維持が6割くらいで、重症度でいうと、ステロイドを塗っても重症のままの患者が約2割というデータがある。

その約2割が依存性群や抵抗性群なんですか?

それもわからない。なにしろ依存性群は存在しないものとされているから研究もきちんと行われていないのさ。海外では少しずつ認知されてきたようだがね。

でも、今聞いたような話はこれまで聞いたことがありませんよ。

まあ、メディアがステロイドの危険性については報じないからね。

なぜですか?

日本皮膚科学会はステロイドは安全という立場だ。厚生労働省も標準治療を推奨しているし、ガイドラインもある。さらに、大学教授からエビデンスがあると言われれば、そうしたいわゆる科学的知見に反する情報を取り上げるのは難しいだろう。

長いものには巻かれろということですか。でも、そうした副作用の存在を指摘することはできるでしょう?

メディアが副作用を紹介すると、ステロイドを怖がる人が増えるだろう。すると、自己判断で使用を中断する患者が出てくる。多くは悪化する。すると、その患者を診ている医者は、メディアは余計なお節介をするな、と腹を立てるわけだ。

そんな。

また、ステロイドを怖がる患者につけ込み商売をしようとする輩も大勢いる。お金をむしり取られる患者がでかねない。

本当ですか? 許せませんね。

それに、メディアがステロイドを取り上げても、大抵は標準治療の紹介だけで紙面がいっぱいになってしまう。メディアでの紹介の仕方が難しいのは確かだね。

しかし、これはステロイドを処方する皮膚科医が取り組むべき問題ではないのですか?

皮膚科医はこれまでステロイドに依存性はないと言ってきたのに、今さらそれを認めたら過去の自分たちを否定することになってしまうじゃないか。学会上層部の非を認めることにもなる。

そんなの認めればいいじゃないですか。

君も組織に属したことがあればわかるだろう。大きな社会問題にでも発展しない限り、変わるのは難しいだろうね。それに実際問題として、ステロイドが使えないと皮膚科医は診療ができなくなってしまう。

知らぬが仏ということですか。納得できませんけれど。

どうかね、ステロイドを塗る気になったかね?

うーん。短期的に使用すれば問題ないのではないですか?

私には長期よりは安全だろうというほかないよ。

どんな薬も長期に漫然と使っているとよくないというのは感覚的にわかりますから。

そうそう長期といえば、ステロイドを10年20年使用していた患者のなかにも、脱ステロイドを試みる患者がいることは知っておいて損はないだろう。

10年後に効かなくなることがあり得るんですか?

神のみぞ知るところだ。

長期に使用をしないで、短期決戦で一気に解決するのがよい気がしてきました。

そうかい。でも今は、プロアクティブ療法といって、間欠的かつ継続的に塗り続けるのが流行なんだよ。

そうなんですか?

結局のところ、治せないのだから対症療法に変わりはないがね。しばらく塗り続けて再発までの期間を長くするんだ。再発の回数が少なければ薬の使用量も少ないというわけだ。

再発してしまったら意味がないですよ。

うまくすれば保湿剤のみの塗布に移行できるらしい。

それが最近の標準治療なんですね。標準治療がそんなにころころ変わっていいものなんですか?

皮膚科医に聞いてくれたまえ。ところで君は本当にアトピー性皮膚炎なのかね?

えっ。そう言われましたよ。

ふーん。そうかね。

何ですか? もったいをつけてないで教えてくださいよ。

本当に長くなるからそろそろ話をおしまいにしよう。

そうですね。なんだか疲れましたよ。

君は一度もステロイド外用薬を使用していないのは幸運だよ。長期や短期だの、リアクティブやプロアクティブだの、依存だのに振り回されることはないわけだからね。ここで、ステロイド外用薬が本当に必要かどうかを考えてもいいかもしれないよ。

皮膚科医とも相談してみます。

それもいいが、ガイドラインの第一選択薬はステロイド外用薬なんだから、皮膚科へ行けば原則としてステロイド外用薬を勧められるに決まっているだろう。

それもそうですね。

すべてを医者まかせにせず、自分の頭で考えて判断することも大切だよ。

わかりました。今日はありがとうございました。

5件のコメント

  1. 本物の理系は断言ができない。ここの話はかなり控えめである。
    統計データの読み方、論文の読み方とその解釈、これらは専門家でも間違うものであり、難しい。だから私の解釈が間違っている可能性もあるがここに記そうと思う。

    アトピー性皮膚炎はある一定まで悪化して、ある一時期から停滞状態を保ち自然治癒する傾向がある。ステロイドがなかった昔もこの流れをたどっていたようだ。つまりアトピー性皮膚炎はある一定以上悪化しないケースがほとんどだという事だ。これを頭に入れたうえで上の話を読み直してみよう。

    「半年のステロイド治療で、改善が4割くらい、症状維持が6割くらいで、重症度でいうと、ステロイドを塗っても重症のままの患者が約2割というデータがある。」

    アトピー性皮膚炎はある一定から悪化しないという立場から見ると、「症状維持の患者が6割」=「塗っても塗らなくても症状が変わらない患者が六割」といえる可能性がある。10人中6人に効果なしで副作用で苦しむ可能性がある、しかもステロイドは治す薬じゃないから長期間副作用におびえながら塗り続けないとだめだとしたらそんな薬を使う気になるだろうか?その費用はもちろん私たちの税金から出るのだ。私の感覚から言えば「冗談じゃない」だ。

    最近「アレルギーの臨床」という日本の学会誌にステロイドを使うアトピー治療とステロイドを使わないアトピー治療の比較が掲載されたが、ステロイドを使わないアトピー治療のほうが効果が高いとでている。

    皮膚科医はいまだにステロイド外用剤という神にすがっているようだが、神は死んだのだ。
    神の死んだ世界で我々は超人として生きねばならぬ。このブログを読んでいる人たちは幸いである。このブログはステロイドの副作用という地獄を見てきた人からの心優しい助言である。死んだほうがましだと思える境遇を潜り抜けてきた人たちからの助言である。このブログの著者および私は、決めつけのようで申し訳ないが「内なる道徳律」からおせっかいかもしれないが助言せざるを得ないように思う。そして私自身はここに書き込むことで自分が果たすべき責任を果たそうとしている。

    後はこのブログに出会い、私のつたない文章まで読んでくれたごく一部の人が良い人生を送れることを願うだけである。

  2. 7月から乳首の浸出液で悩んでいます。
    それ以外はまぁまぁ落ち着いています。

    これは自然と治るのを待つしかないのでしょうか?

    1. 治療方法の相談には応じられません。
      以下、アドバイスではなく、滲出液についての個人的な見解を述べます。滲出液をすぐにも止めたい場合はステロイドを塗るか飲むかして炎症を抑えればよいと思います。ただし、ステロイドを中止した場合に炎症が再燃する可能性があります。ステロイドを使いたくない場合は自然に炎症がおさまるのを待つこともひとつの方法だと思います。滲出液の原因が炎症であれば、炎症に対処するのが合理的と考えます。
      以上、個人的見解です。ご心配なら医師の診察を受けてはいかがでしょうか。脱ステしているなら脱ステ医で良いでしょうし、標準治療の医師でもステロイドをできる限り使いたくないという希望を伝えれば相談には応じてくれるでしょう。おそらくステロイドを勧められるとは思いますが。

  3. 長い間更新されていませんね、、、
    冬で乾燥も厳しく、もしかしてアトピーがかなり悪化されたのでしょうか
    自分も苦しい状態なのですが管理人さんはそうでないことを祈っています

    それともこの記事がこのブログの集大成的なものだったのでしょうか

    1. お気遣いいただきありがとうございます。
      冬になってから症状は悪化しています。
      また、この記事はある種これまでのまとめの内容でした。
      症状が悪化しても記事が書けないことはないですし、新たに書くべき内容がないわけではありませんが、今の生活の中で他に優先すべき事柄が色々とあるため更新できていません。

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