ステロイドはだんだん効かなくなる

ステロイド外用薬はだんだん効かなくなる?

ステロイド外用薬を使っていると、だんだん当初のような効果を感じられなくなることがあります。

この現象を、効果減弱と呼んだり、タキフィラキシーと呼んだりします。

今回は、ステロイド外用薬治療において話題になることの多いこの現象を取り上げます。

 

「タキフィラキシー」という用語について

薬の投与を繰り返しているうちに、短時間で薬効が減弱することを「タキフィラキシー」と呼びます。

医薬品の一部では、治療などの目的で投与を繰り返しているうちに、その薬効が減弱し、最終的にはほとんど効かなくなる場合がある。医学(特に薬理学)では、この現象を耐性と呼ぶ。また、特に短時間のうちに耐性が形成される現象はタキフィラキシー(速成耐性、速成寛容)と呼ばれる。1)耐性 (薬理学)」(2017年5月13日 (土) 00:14 UTCの版)『ウィキペディア日本語版』。

アトピー性皮膚炎においても、ステロイド外用薬の投与を繰り返しているうちに、だんだんとその効果が減弱することをタキフィラキシーと呼ぶことがあります。

ただし、タキフィラキシーは短時間のうちに生じる現象を指しますから、アトピー性皮膚炎におけるように、長期にわたりだんだんと効かなくなる現象をタキフィラキシーと呼ぶことは不適切であるという指摘もあります。

The standard definition of tachyphylaxis does not fit well with the more clinically significant, frequently observed phenomenon that our patients complain of, that slowly, over time, their topical glucocorticoid doesn’t work as well as it used to. Tachyphylaxis may be a poor term for this latter phenomenon, which may be better labeled, “bradyphylaxis,” and which can be defined as “a slow, progressive decreasing response to treatment over long periods of use.”

タキフィラキシーの一般的な定義は、臨床的に明らかで頻繁に観察される現象、すなわち、ゆっくりと時間が経つにつれ、ステロイド外用薬が今までのように効かなくなると患者が訴える現象を説明するには適していない。タキフィラキシーは後者の現象を説明するにはおそらく不適切で、”ブラディフィラキシー” と呼ぶべきであり、それは “使用が長期間にわたる治療に対するゆっくりとした進行性の反応の低下” と定義できるであろう。2)Taheri A, Cantrell J, Feldman S R. Tachyphylaxis to topical glucocorticoids; what is the evidence? Dermatol Online J 2013; 19:18954.

使用が長期間にわたる治療において、ステロイド外用薬への反応が低下しているのであれば、患者は「タキフィラキシー」というよりも、「ステロイド外用剤依存」に陥っているのかもしれません。

ただ、期間の長短に限らず、ステロイド外用薬の効果が減弱する現象については、タキフィラキシーという言葉が用いられる場合が多いので、本稿では、効果減弱とタキフィラキシーという言葉を無差別に検討します。

 

タキフィラキシーは “比較的よく起こる臨床事象”

ステロイド外用薬の使用に伴うタキフィラキシーについては、du Vivier が1975年に報告しています。血管収縮作用に対する急性の耐性がヒトで観察されました。

これまでに認識されていない薬理事象として、局所に塗布されたグルココルチコステロイドの血管収縮作用に対する急性の耐性が、ヒトの皮膚において見出されている。このように、強力なステロイド外用薬は最初にヒトの皮膚に塗布されたときは血管収縮を引き起こすが、その後の塗布では血管収縮は急速に減退する。しかし、数日の休息期間後には、当初の血管収縮作用が再び起きる可能性がある。けれども、ステロイドが再度継続塗布されれば、この作用もまた消失する可能性がある。3)du Vivier A, Stoughton RB. Tachyphylaxis to the action of topically applied corticosteroids. Arch Dermatol. 1975 May;111(5):581-3.

 

近年ではどうでしょうか。アメリカで出版された、ある皮膚科の教科書には、タキフィラキシーについて次のように記述されています。

In my experience tachyphylaxis is a relatively common clinical event with very high-potency (class 1) topical corticosteroids. […]

The clinician should be aware that continued daily or twice daily application of a class 1 topical corticosteroid to minimally inflamed skin (without any other maneuvers to increase percutaneous absorption) commonly leads to tachyphylaxis after 2-4 weeks of continuous therapy.

私の経験では、タキフィラキシーは、非常に強い力価(クラス1)の局所コルチコステロイドを用いた際に生じる比較的よく起こる臨床事象である。 (中略)

臨床医は、最小限の炎症を起こした皮膚(経皮吸収を増加させる手技は用いていない)に、クラス1の局所コルチコステロイドを継続して毎日または1日2回塗布すると、2〜4週間の継続治療後に、通常タキフィラキシーが起こることを認識すべきである。4)Stephen E Wolverton, Comprehensive Dermatologic Drug Therapy, 3rd Edition, 2012.

強力なステロイド外用薬による治療では、2~4週間という短期においてタキフィラキシーが起こるとして、臨床医に注意を促しています。

 

また、タキフィラキシーを予防するためのステロイドの使用方法について、ヨーロッパのある教科書においては、次のように記述されています。

To prevent tachyphylaxis, side-effects and rebound phenomena, it is better to use a potent steroid intermittently or in the short term, followed by a less potent preparation or the alternate use with emollients.

タキフィラキシー、副作用、リバウンド現象を防ぐためには、強力なステロイドは間欠的または短期間のうちに使用し、その後は弱いものにするか保湿剤と交互に使用するのが好ましい。5)Andreas D. Katsambas, Torello M. Lotti, European Handbook of Dermatological Treatments. Springer; 2nd edition, 2003.

 

もしタキフィラキシーが起きたらどうするか。ニュージーランドの皮膚科専門医らの慈善団体 DermNet New Zealand のサイトには、次のように記述されています。

If tachyphylaxis occurs, treatment needs to be tailored to the individual patient. Changing to a different topical steroid of the same strength can be helpful.

もしタキフィラキシーが起きたら、治療は個々の患者に合わせて施す必要がある。同じ強さでも異なるステロイド外用薬への変更が有用かもしれない。6)https://www.dermnetnz.org/topics/treatment-of-atopic-dermatitis/

 

タキフィラキシーの個人的体験

上記に報告されているように、私もステロイド外用薬の使用中に、だんだんとステロイド外用薬が効かなくなるという体験をしました。

最初のうちは、ステロイド外用薬を塗ると、きれいさっぱり何事もなかったように湿疹は消えるのですが、数日後にはまた湿疹が再発します。湿疹が出ては塗り、出ては塗るということを繰り返していました。

その後、最初の処方から半年後くらいに、ステロイドを塗って一度は消えた湿疹のぶり返しがだんだん強くなってきました。また、湿疹の面積が広がるようになりました。そのため、以前よりも多量のステロイドを塗らないと、湿疹を消すことができなくなりました。

ステロイド外用薬は、FTU(フィンガー・ティップ・ユニット)が適切な塗布量の単位とされています。1FTUで手のひら2枚分の面積です。当時の私の場合、その面積に対して1FTUではとても足りませんでした。

ですから、治療上の問題としてよく指摘されるステロイドの過少使用ではなく、私は過剰に使用していました。ステロイド外用剤依存に陥っていたのだと思われます。

その時の感覚は、まさに「ステロイドが効かなくなった」というものです。

ステロイドのランクも上がりました、それまでストロングだったのが、ベリーストロングのステロイドが処方されるようになりました。

その後も湿疹は広がり、かゆみは増し、1日2回の塗布ではとても我慢できず、トイレで掻きむしるようになり、外出時にステロイドを携帯するようになりました。

さらに、それまでまったく湿疹がなかった顔にも湿疹が出始めました。最終的にはリバウンド現象が生じ、通常の生活を営むことができなくなりました。

 

タキフィラキシーを否定する日本皮膚科学会

以上のように、ステロイド外用薬を使用しているうちにだんだんと効かなくなるという現象は、医師にも患者にも、よく知られています。

 

ところが、日本皮膚科学会に所属する一部の医師は、ステロイド外用薬を長期間使っていても、だんだんと効かなくなるということはないと主張しているのです。

どんなに長く使ってもステロイド外用薬が効かなくなることはありません。皮膚の炎症の強さに合ったステロイド外用薬を使わないと塗っても効かないと思うことがあるかもしれません。7)患者の視点で考えるアトピー性皮膚炎 | アトピー性皮膚炎ってどんな病気?

それでは、アトピー性皮膚炎診療ガイドラインは、タキフィラキシーをどう捉えているのでしょうか。

ガイドラインは、<参考2>としてタキフィラキシーを取り上げています。

<参考2>タキフィラキシーについて
ステロイド外用薬を用いた治療中に,当初改善していた症状が再燃することもある.この現象の背景にステロイド外用薬の長期使用に伴う急速な効果の減弱(タキフィラキシー)を指摘する声も聞かれる.ステロイドの血管収縮作用に着目し,ステロイド外用薬がヒスタミンによる血管拡張に与える影響を検討した報告によると,外用開始14 日目には血管収縮作用の低下が見られ,皮膚炎の存在下ではより早期に効果の減弱を認めたという43)44).これらはヒスタミンの効果をステロイドで抑制する実験であり,ヒスタミン以外の機序も大きく病態に関与するアトピー性皮膚炎にそのまま当てはめて考えることはできない.慢性炎症性疾患である乾癬では,ステロイド外用薬による12 週間の治療中にステロイドタキフィラキシーはみられなかったという報告がある45).皮膚炎の治療中に期待された効果が得られない場合は適切に外用が行われたか確認をすることも大切である.

43) Singh S, Gupta A, Pandey SS, Singh G: Tachyphylaxis to histamine-induced wheal suppression by topical 0.05% clobetasol propionate in normal versus croton oil-induced dermatitis skin, Dermatology, 1996; 193: 121―123.

44) Singh G, Singh PK: Tachyphylaxis to topical steroid measured by histamine-induced wheal suppression, Int J Dermatol, 1986; 25: 324―326.

45) Miller JJ, Roling D, Margolis D, Guzzo C: Failure to demonstrate therapeutic tachyphylaxis to topically applied steroids in patients with psoriasis, J Am Acad Dermatol, 1999; 41: 546―549. 8)アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2016年版

この記述を読んで感じるのは、”アトピー性皮膚炎ではタキフィラキシーは起きない” という日本皮膚科学会の方針に沿うように書かれた、もとよりバイアスのかかった記述であるという印象を否めないことです。

ガイドラインの執筆担当者は、執筆にあたって過去から現在までの世界中の文献をチェックしているのですから、当然に、du Vivier による Tachyphylaxis についての報告や、海外皮膚科テキストなど成書における Tachyphylaxis についての記述を目にしているはずです。私のような素人がちょっと探しただけでも見つかるわけですから。

にもかかわらず、ヒスタミン誘発性作用に対する効果減弱を論じた論文を抽出したり、乾癬におけるタキフィラキシーへの否定的な報告を併せ持ってくるのは、不自然であり、形を取り繕った感が否めないのです。

また、記述の最後の一文に、「皮膚炎の治療中に期待された効果が得られない場合は適切に外用が行われたか確認をすることも大切である」とあります。結局、”患者の塗り方が悪いのだ” と言っているようなものです。

 

タキフィラキシーを否定する皮膚科医

私は、タキフィラキシーについて考えるときは、相当に長期の使用期間を考慮する必要があると思います。

私がステロイド外用薬の効果減弱を感じ出したのは、その使用から少なくとも「半年以降」です。

また、患者のなかには、ステロイドが効かなくなったのが、「数年後」だったり、「十数年後」だったという者もいるでしょう。

考慮する使用期間を誤ると、次のような指導が行われることになります。

患者から,「ステロイドを塗り続けていると,だんだん効かなくなってしまうのではないですか」と聞かれた時は,「塗り始めて2~3週間すると,最初の頃より少し効果が弱くなったように感じることがあります.しかし,以後はそれ以上効果が低下することはありません.長くステロイドを塗っていると徐々に効かなくなり,最後にはステロイド抵抗性になるというのは間違いです」と答えることにしている.9)相馬良直, ステロイド外用剤の使い方-正しい知識を持って上手に使おう-, J.JOCD Vol.24, No.3 2007.

効果減弱は、数週間から十数週間のうちの、短期的な現象に限定されるわけではありません。

 

私は、「ステロイド外用薬が効かなくなることはない」という医師を信用しません。

なぜなら、私が、私の体にステロイドを塗り、ステロイドがだんだん効かなくなる現象を、私自身が経験したからです。事実として私の身に起きたことだからです。

医師から「ステロイド外用薬が効かなくなることはない」と懇切丁寧に説明され、数多くのエビデンスを示されたとしても、私は信じません。

ステロイドを使ったこともない人間が、憶測を言っているにすぎないと一蹴します。

 

ところで、「ステロイド外用薬が効かなくなることはない」という説を医師が支持するかどうかは、その医師の信頼度を測る指標になると思います。

ステロイドが効かなくなることはないと言い張る医師は、ステロイドが効かなくなった患者を診たことがないのでしょうから、臨床経験に乏しい医師、患者から信用を失った医師であるとみなせるからです。

患者は、ステロイドが効かなくなったときなど、ステロイド治療中に何らかの異常が起こったとき、大きな不安を抱きます。

その重大な局面で、患者が医師を信用できれば、再び診察室を訪れるでしょう。しかし、患者がその医師を信用できないと判断すれば、医師を変えることになります。

つまり、ステロイドの治療で副作用など見たことがないという医師は、副作用を起こした患者から頼りにされず見限られた医師である可能性が高いのです。

「ステロイド外用薬が効かなくなることはない」と主張する医師は、ステロイドが効かなくなった患者から信用を得られず、患者から逃げられた医師かもしれません。

 

タキフィラキシーにエビデンスはない?

さらに文献を検討してみましょう。日本皮膚科学会が喜びそうな文献が2つ見つかりました。

1つは、ステロイドに対するタキフィラキシーに関する論文を、2012年時点で Medline と Google Scholar を対象として検索調査したレビューです。

その結果、52の関連論文が見つかり、その中にステロイド外用薬の効果が減弱するという考え方を支持する論文はなかったとしています。

Based on available data in literature, there is no clinical trial supporting the concept that topical glucocorticoids lose effectiveness over time, nor that intermittent use of topical glucocorticoids is more effective than continuous use.

文献から入手できるデータに基づけば、長期においてステロイド外用薬の効果が減弱するという考え方、また、ステロイド外用薬の間欠使用が継続使用よりも効果的であるという考え方を支持する臨床試験は存在しなかった。

Whether called tachyphylaxis or bradyphylaxis, loss of clinical effects of topical glucocorticoids in inflammatory skin disease has been an accepted belief in dermatology for many years. Interestingly, after a thorough search of literature for the origin and a
precise explanation behind this commonly held belief, not one clinical trial gave evidence supporting this widely accepted dogma. In the clinical trial setting, topical glucocorticoids appear to retain clinical effectiveness for at least 52 weeks.

タキフィラキシーであろうと、ブラディフィラキシーであろうと、炎症性皮膚疾患においてステロイド外用薬の臨床効果が減少するという考え方が、長年にわたり皮膚科学において受け入れられてきた。興味深いことに、その原著の文献や、この一般通念を裏付ける明確な説明を検索したところ、この広く受け入れられている定説を支持するエビデンスを与える臨床試験はひとつも無かった。臨床試験の枠組みの中では、ステロイド外用薬は少なくとも52週間にわたり臨床効果を保ち続けるものと思われる。10)Taheri A, Cantrell J, Feldman S R. Tachyphylaxis to topical glucocorticoids; what is the evidence? Dermatol Online J 2013; 19:18954.

タキフィラキシーを支持する論文は、ひとつもなかったそうです。

さて、このレビューを読んで、私は、タキフィラキシーは存在しないかもしれないと考えを変えるでしょうか。残念ながら、変わりません。

先述したように、タキフィラキシーについて検討するときは、相当に長期の使用期間を前提とする必要があると考えます。

ここでは、「文献から入手できるデータに基づけば」、「臨床試験の枠組みの中では」、という但し書きがポイントです。入手できたデータは、最長でも52週という短期の臨床試験の文献ばかりです。

そもそも、数年、十数年、数十年などの長期にわたりステロイド外用薬の効果減弱を調べたことがないのですから、いくら文献を探したところで、エビデンスが出てくるわけがありません。

「文献に記載がないから効果減弱現象は存在しない」と結論づけるのではなく、「効果減弱現象が報告されているから詳細に調べて文献に残すべきかどうか検討しよう」と留保するのが臨床家としての正しい態度ではないでしょうか。

 

“ステロイドは2割の患者に効かない”

2つめの文献は、アトピー性皮膚炎患者15人に対する16週間の治療におけるステロイドに対する反応を調べた論文です。

16週後にタキフィラキシーの兆候を示したのは、15人中3人のみだったそうです。

中等症から重症アトピー性皮膚炎患者15人のグルココルチコステロイド反応が解析された (TableI )。臨床反応の代表写真を図1, Aに示した。16週までの平均疾患活動性(SCORADを使用)において、すでに2週後で16.7%の平均SCORADの有意な減少をもって段階的な継続改善が示されたが、最大の減少は16週後の36.0%であった(図1, B)。治療16週後にSCORAD50に達したのは患者15人中3人のみであったが、11人が4週後に疾患の継続的な臨床改善を示し、長期治療でのグルココルチコステロイド関連性タキフィラキシーの兆候を示したのは3人のみであった(図1, C)。

4週目のステロイドの効果が、16週目よりも大幅に低かったことは驚きである。我々の発見は、しばしば指摘されるステロイド関連性タキフィラキシーへの懸念に反して、長期ステロイド暴露の利益を示唆している。タキフィラキシーの影響は、4週後において、患者のうち3人のみにしか観察されなかった。11)PM Brunner et al. A mild topical steroid leads to progressive anti-inflammatory effects in the skin of patients with moderate-to-severe atopic dermatitis. J ALLERGY CLIN IMMUNOL JULY 2016 Volume 138, Issue 1, Pages 169–178.

治療後4週目よりも16週目の方がステロイドが効いているようであり、かつ、タキフィラキシーは15人中3人のみにしか観察されなかったそうです。

そもそも16週間という短期試験ですが、それはさておき、こちらは「3人のみ」という表現がポイントです。裏を返せば、タキフィラキシーが3人には観察されたわけです。

そして、この3人は患者群のうちの20%です。20%というのもポイントで、標準治療におけるコントロール不良群の割合が約20%という報告があります 12)Furue M et al. Current status of atopic dermatitis in Japan. Asia Pac Allergy 2011; 1: 64-72.  13)“ステロイドは2割の患者に効かない”

ステロイド中止前にタキフィラキシーを生じるステロイド外用剤依存患者が、患者群の2割程度存在するかもしれないことが示唆されます。

 

生物学的製剤の効果減弱

ステロイド外用薬が長期使用中に効果減弱することは臨床的に知られています。

しかし、こと日本においては、日本皮膚科学会の広報活動により “ステロイド外用薬が効かなくなることはない” という “定説” が広く受け入れられています。

したがって、患者が「ステロイドが効かない」と訴えても、医師から塗り方が悪いからだと決めつけられてしまう現状があります。

また、仮にある皮膚科医がステロイド外用薬の効果減弱を観察したとしても、学会が「無い」と言っている現象を、「ある」とは言いにくいことが推測されるのです。

このように、現在の日本では、アトピー性皮膚炎に対するステロイド外用薬の使用において、効果減弱は存在しないものとされています。

 

一方で、関節リウマチ(RA)に対する生物学的製剤の使用においては、効果減弱の存在が認められています。

生物学的製剤を使用しても反応を示さない症例や効果減弱を示す症例も少なくない.14)三橋尚志, 万波健二, 抗TNF製剤スイッチング療法におけるアダリムマブ投与の臨床成績. Clin Rheumatol,22:180~186,2010.

最近、我々が経験した患者さんで、生物学的製剤の投与開始初期は効果があるにもかかわらず、 徐々にその効果が減弱する患者さんが存在するように思われます。実はこういった患者さんは、 関節リウマチの患者さんに投与しているときにも良く経験されることで、これは投与した製剤に対する中和抗体が体の中にできることが関係していると考えられています。15)生物学的製剤〜最近のトピック〜

インフリキシマブでは、投与間隔が 8 週毎となる投与開始 14 週以降に、関節炎の活動性の再上昇が見られる症例が散見される。本邦では、欧米で使用されるインフリキシマブ投与量 3~10mg/kg の最低量での承認となった。このため、投与間隔が8週間となる頃からインフリキシマブ 3mg/kg では、有効血中濃度を維持することが時に困難となり、効果不十分に陥る症例が存在する。16)齋藤和義, RAにおける生物学的製剤の効果減弱に対する対処法, 産業医科大学医学部第一内科学講座(2008年、第9回博多リウマチセミナー)

そのために、関節リウマチにおける生物学的製剤による治療においては、効果減弱が起きないようにするための方法が模索され、研究が重ねられています。

RA では寛解導入を早期に達成するとともに,寛解を長期に渡って維持することも大切で,そのために効果減弱させない工夫や安全性マネージメントなど多面的アプローチが必要である.効果減弱(二次無効)の原因として抗製剤抗体の産生が大半を占める.(中略)

抗製剤抗体による二次無効を減らして長期の寛解を維持するためには,これら要因を考慮した生物学的製剤使用の最適化が必須である.17)桑名正隆, 関節リウマチ治療における生物学的製剤を免疫原性の観点から考察する. 日本臨床免疫学会会誌(Vol. 38 No. 4)

アトピー性皮膚炎においても、関節リウマチにおけるように、効果減弱の原因やステロイド外用薬使用の最適化に対する研究を進めるべきではないでしょうか。

存在しないものを研究することはできませんから、まずはタキフィラキシーないし効果減弱、ステロイド外用剤依存の存在を認めることが必要です。日本皮膚科学会は、これまで掲げてきた “定説” を改めるべきでしょう。

さもなければ、副作用に苦しむ患者はいつまで経っても減らないことになります。

 

(当サイトはいかなる治療法をも推奨するものではありません。また、当サイトに掲載されている情報を利用することにより発生したいかなる損害についても責任を負うものではありません。)

(引用部分の翻訳および赤字による強調表示は当サイトによります。正確な翻訳を期していますが、正確性を保証するものではありません。)

References   [ + ]

1. 耐性 (薬理学)」(2017年5月13日 (土) 00:14 UTCの版)『ウィキペディア日本語版』。
2. Taheri A, Cantrell J, Feldman S R. Tachyphylaxis to topical glucocorticoids; what is the evidence? Dermatol Online J 2013; 19:18954.
3. du Vivier A, Stoughton RB. Tachyphylaxis to the action of topically applied corticosteroids. Arch Dermatol. 1975 May;111(5):581-3.
4. Stephen E Wolverton, Comprehensive Dermatologic Drug Therapy, 3rd Edition, 2012.
5. Andreas D. Katsambas, Torello M. Lotti, European Handbook of Dermatological Treatments. Springer; 2nd edition, 2003.
6. https://www.dermnetnz.org/topics/treatment-of-atopic-dermatitis/
7. 患者の視点で考えるアトピー性皮膚炎 | アトピー性皮膚炎ってどんな病気?
8. アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2016年版
9. 相馬良直, ステロイド外用剤の使い方-正しい知識を持って上手に使おう-, J.JOCD Vol.24, No.3 2007.
10. Taheri A, Cantrell J, Feldman S R. Tachyphylaxis to topical glucocorticoids; what is the evidence? Dermatol Online J 2013; 19:18954.
11. PM Brunner et al. A mild topical steroid leads to progressive anti-inflammatory effects in the skin of patients with moderate-to-severe atopic dermatitis. J ALLERGY CLIN IMMUNOL JULY 2016 Volume 138, Issue 1, Pages 169–178.
12. Furue M et al. Current status of atopic dermatitis in Japan. Asia Pac Allergy 2011; 1: 64-72.
13. “ステロイドは2割の患者に効かない”
14. 三橋尚志, 万波健二, 抗TNF製剤スイッチング療法におけるアダリムマブ投与の臨床成績. Clin Rheumatol,22:180~186,2010.
15. 生物学的製剤〜最近のトピック〜
16. 齋藤和義, RAにおける生物学的製剤の効果減弱に対する対処法, 産業医科大学医学部第一内科学講座(2008年、第9回博多リウマチセミナー)
17. 桑名正隆, 関節リウマチ治療における生物学的製剤を免疫原性の観点から考察する. 日本臨床免疫学会会誌(Vol. 38 No. 4)

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